2022.09.12

液晶乳化とは?その効果と方法を紹介

ここ数年、高品質な化粧品において液晶乳化法でつくられた商品をよく見かけます。一般的な乳化法でつくられた化粧品より保湿性・浸透性に優れていると言われています。このコラムでは液晶乳化法は機能的な製剤ができるのか?どのような化粧品に用いられてどのような効果が得られるのか?などを解説していきます。

液晶乳化の定義・原理

液晶乳化とは数ある乳化方法のうちの一つで、界面活性剤が形成する液晶相に油分を攪拌することで分散させて微細な乳化粒子を生成する技術になります。ちなみに液晶とは液体と固体の中間状態の物質になります。

メリットとしては弱い攪拌力でも微細な乳化粒子をつくれること,安定なエマルションが得られるということが挙げられます。さらに使用する界面活性剤により機能を持たせることが可能です。

 

液晶乳化の特長

液晶乳化は下記のような特長になります。

乳化粒子の細かさ

界面活性剤を使用し液晶相を生成させて、攪拌して油相を分散させると微細な乳化粒子を作ることができます。一般的な乳化方法で出来る乳化粒子径は1~15μmに対して、液晶乳化は0.1~1μmになります。乳化粒子が細かいことで油っぽくなくサラサラとした感触の乳化製剤をつくることが出来ます。

乳化粒子の壊れにくさ

乳化粒子が細かく、また少量の乳化剤で水と油を安定化できるので、通常の乳化方法と比べ乳化粒子が壊れにくくなっています。このことによりべたつきを抑えるだけではなく、皮膚浸透性が高い乳化製剤をつくることが出来ます。

 

ラメラ構造を代表とした液晶構造の形成

液晶構造を形成しやすい界面活性剤によってつくられた液晶相のなかに油相を分散させることで、ラメラ液晶構造をはじめとした液晶構造を形成します。例えばラメラ液晶構造は肌表面の角質細胞間の細胞間脂質と同じ構造であるため、化粧品に使用することで通常の乳化製剤より肌浸透力が高く、肌水分の蒸発を防いでくれます。

液晶乳化の化粧品の種類と特長

一般的に液晶乳化法で乳化された化粧品はラメラ液晶構造を持っている場合が多く、高級な化粧品として販売されているケースが多いです。

化粧水

ビタミンやアミノ酸など肌に必要な成分だけではなく、セラミド、ペプチド、甘草、コケモモエキスなどの人が保有していない有効成分を閉じ込め、肌に水分を補いつつ角質層に浸透させることが出来ます。

 

乳液・クリーム

肌に元からある保湿成分ビタミンやアミノ酸類だけではなく、セラミド、スクワランなどの人が保有していない保湿成分を角質層に浸透させ、肌の水分蒸発を防ぎ油分を保ちます。

 

ラメラ構造は人の肌の角質細胞の間を埋めている「細胞間脂質」と同じ構造で、水と油がミルフィーユのように何層にも重なっていて、水に溶ける成分は水の層に、油に溶ける成分は油の層に安定的に溶け込んでいます。それぞれの成分はじっくりと時間をかけて肌に浸透していきます。

 

通常乳化で製造された化粧水や乳液は有効成分を閉じ込めた粒子が角質層の構造とは違うので、肌に塗った時点で、構造が壊れてしまい有効成分が角質層の奥までは浸透しにくいのです。

 

液晶乳化の種類

液晶乳化の方法は細分化すると何種類かありますが、ここでは代表的なものを紹介します。

 

ラメラ液晶を用いた液晶乳化

一般的な液晶乳化法としての製造方法です。2段階の工程で行われます。第1工程では液晶に攪拌下で油相を添加していき、液晶中に油が保持されたゲル状の液晶中油型エマルションを生成させます。第2工程では、ゲルに水相を加えてO/W型エマルションを生成させます。

第一工程において、液晶乳化に適したラメラ液晶を形成する二鎖型の界面活性剤がよく使用されます。

逆ヘキサゴナル液晶を用いた液晶乳化

疎水性が強い界面活性剤を使用し、逆ヘキサゴナル型液晶を形成させます。多少の油が存在しても液晶が消失しない条件下で、油を含む液晶に水相を添加すると、W/O型エマルションが生成されます。このエマルションは水相が強固な液晶膜により隔てられているため、内相の容積が大きな高含水系でも安定に存在できます。

液晶乳化を用いたW/O型エマルションは通常のW/O型エマルションより、さっぱりとした使用感となり、撥水性もあるため、UVクリームや、クリーム状ファンデーションのベースとして使用されています。

液晶乳化を用いた化粧品を開発するには

液晶乳化を用いた化粧品をつくることで、化粧品に浸透力の高いラメラ構造の特長を持たせ高価格帯で販売することが可能です。しかし、液晶乳化は高い攪拌力はいらないものの特別な乳化剤の開発が必要となってきます。実際に液晶乳化を用いてラメラ構造の機能を持つ化粧品は、それほど多くの種類は販売されておりません。

 

JC皮膚科学研究所ではラメラ液晶構造を持つ化粧品の処方例を持っていますので、化粧品処方開発の参考にしていただければと思います。

 

参考処方

>>ラメラ美容液

>>ラメラ保湿クリーム(しっとり)

>>ラメラ保湿クリーム(さっぱり)